エステやリラクゼーション業界では、サービス精神が求められる一方で、理不尽な要求や態度を取るいわゆる“カスタマーハラスメント(カスハラ)”に悩むスタッフも少なくありません。
今回は、私がエステティシャンとしてデビューして半年ほど経った頃に経験した、今でも忘れられない「VIPカスハラ客」との出来事を書いていきます。
当時の私は経験も浅く、怖さと緊張で対応が精一杯でしたが、今振り返ると学びも多い出来事でした。
同じように現場で働く方の参考に少しでもなれば嬉しいです。
店で一番“高額パック”を購入するVIPだが、実はスタッフ全員から嫌われていた客
そのお客様は、100万円パック・200万円パックなど、高額コースを購入する“VIP”扱いの人でした。
ボディもフェイシャルもすべて店長級スタッフ対応。新人NG。
一見、ありがたいお客様のようですが、実際はまったく逆。
・予約時間に必ず10〜15分遅れてくる(遅れる連絡は一切なし)
・態度が大きく、常に上から目線
・自分は特別という態度で、どれだけ遅れても施術を要求
・新人は拒否、ベテランしか受け付けない
今で言う「カスハラ客」に該当する典型的なタイプでした。
スタッフ間でも「あの人は無理」と共通認識が出来ているほど。
店長ですら、その対応にいつも神経をすり減らしている状態でした。
店長の休日に合わせて来店…しかし“予約時間に来ない”
その日は店長が“そのVIP客のためだけに”わざわざ休みを返上し、ピンポイントで出勤していました。
しかし、予約時間になっても来ない。
15分前、10分前…
店長は明らかにイライラしていました。
そして店長が私に言った一言が、すべての始まりでした。
「予約時間から10分待って来なければ、あなたが入ってね。来なかったら知らせるから」
私は自分のお客様に入っている最中。
あのVIP客の声も聞こえてこない…
ほどなくして、店長からメモがドアの下に滑り込んできました。
「来なかったからよろしくね」
と書いたメモを見た時、私の祈りは届かなかったって感じです(涙)
その瞬間、どうかお願いだから来てって言う思いと、もしも来なかったら…と心配と複雑な気持ちでした。

いずれ入ってもらうからと言われていたお客様ではあったけど、その日が突然やってきたので、心臓バクバクでした。
1時間遅れてVIP客が来店…すでに怒りMAXの状態
私の施術が終わった頃、VIP客がようやく来店。
予約時間から1時間遅れ。
フロントでもひと揉めしたようで、
「店長がいないのはおかしい」「自分は店長にやってもらう予定だった」
と、不機嫌さが全身から溢れていました。
私は部屋に案内し、いつも通り
「○○が担当いたします。よろしくお願いいたします」
と挨拶しましたが、空気は最悪。
怒りの矛先がこちらに向いているのが、ヒシヒシと伝わってきました。
新人の私に当たること自体が気に入らない様子で、私は手が震え、いつもの施術ができませんでした。

緊張で手が震えているうえに、こういう時に限って、ピーリング材がクレーター肌に入り込んで取れないとか、パック材が鼻の穴に思いっきり入ってしまうと言う失態をしてしまうんですよねw
やっと施術が終わった…しかし最後に“最悪の出来事”が起きた
フェイシャルが終わり、ベッドを起こす場面。
古い手動式のフェイシャルベッドで、起こす時だけ異様に重いタイプ。
ストッパーを外して背もたれを起こそうとした瞬間、
ガクッ……!
背もたれが下がり、脚側が上に上がってしまう最悪の失態。
倒す時は問題なくても、起こすのは全体重乗っている感じで相当重かったのです。
それでも起こさなければいけないので、私は背もたれに自分の身体を潜り込ませ、背中で必死に押し上げました。
その瞬間、VIP客が言い放った言葉は…
「あんたとは合わんわ」
その一言で、涙が溢れそうになりました。
怖い、恥ずかしい、悔しい、情けない…。
いろいろ混じって何も言えず、ただ
「申し訳ありませんでした…」
と泣きそうな声で謝ることしかできませんでした。

身長165ぐらい、体重80キロぐらいという体格の方で、私は150ぐらいで、体重43キロぐらいでした。下がりすぎないよう気を付けてたのですが、私の手だけで支え切れず、下がった頭側に私の体を入れて、背中で必死で押し上げたのですが、コントでありそうな状況がリアルでありました。とどめの失態でしたw
涙が止まらなかった施術後。スタッフの反応は意外にも温かかった
ロッカーに案内し、部屋に戻った瞬間、涙がポロポロ溢れました。
悔しいとか、怖かったというより、緊張から解放された“ほっとした涙”でもありました。
フロントのスタッフに報告すると、
「あんな客、よく対応したよ」
「その失敗も、遅れてきた客への嫌がらせに見えるね(笑)」
と言われ、少し笑いにも変わりました。
店長も戻ってきて、ケーキを買ってきてくれ、
「悪いのはあの人だから。遅れてきたら私はやらないと言っていたのに守らなかったんだから、気にしなくていい」
とフォローしてくれました。
誰も私を責めなかった。
そのことが何より救いでした。
今振り返って思うこと:カスハラ客には“下手に出る必要はない”
あの時は新人で、自信もなく、怖さが勝っていました。
でも今は思います。
✔ 遅刻を繰り返す
✔ 自分は特別だと思っている
✔ 新人を拒否してスタッフを選ぶ
✔ 怒りをスタッフにぶつける
こういう人は「お客様」ではなく 加害者 です。
お金を払っているから偉いわけではない。
特にエステのような“心身を扱う仕事”では、お互いの信頼関係が最重要。
今なら、私ははっきりと言えます。
「こちらの規則に従えないお客様はお断りします」
と。

ルール守れないお客さんを許したり甘やかすと、最終的に自分を苦しめることに。独立してホント思います。
まとめ
あの日から何年も経ちますが、今でもあのお客さんの声や表情を思い出すことがあります。
でも、ひとつだけ確実に言えるのは、
“悪いのは私ではなく、ルールを無視してハラスメントをする側”
ということです。
サロン業界含め、接客業では「クレーム=絶対に謝る」という空気がありますが、
理不尽な要求には毅然とした姿勢が必要です。
あの経験は怖かったけれど、
店長含め同僚も私を非難する人がいなかったのが救いでした。
その後、そのお客様の態度が激変することはないけど、遅刻する頻度が減ったくらいです。
私は、そのお客様が来店するときは、スタッフルームか自分の使う部屋に待機し、顔を合わせないようにしていました。

