私がエステサロンで出会ったこの女性は、ただ浪費家だったわけでも、気が弱いだけではなかったと思います。
彼女の行動の背景には、
満たされない感情を、買い物やサービスで補おうとする心理
が働いていた可能性が高いと考えています。
ここでは、その心の動きを考察します。
① 褒められることで“自分の価値”を感じていた
彼女は「褒められると買ってしまう」と話していました。
これは、
人からの好意や言葉によって、自分の存在価値を確認していた
という心理が見えます。
本来は、
- 自分で自分を認められる
- 自分の選択に自信が持てる
という“内側の満足”があると、必要なものだけを選べます。
しかし彼女は、外側からの評価や優しい言葉を受けることで、
- 自分は大切にされている
- 価値ある存在なんだ
- 誰かに認めてもらえた
と感じられる瞬間があったのだと思います。
だからこそ、
褒められる → 嬉しい → 買ってしまう
というサイクルができてしまったと考えられます。
② 買い物そのものが“心の穴を埋める行為”になっていた
人は本当に満たされているとき、必要以上の買い物はしません。
しかしこの女性にとって買い物は、
気持ちの不足感を一時的に埋めてくれる“心の処方箋”のような役割
を持っていた可能性があります。
心理学ではこれを「感情補填行動」と呼びます。
買い物には一時的な高揚感があります。
- 不安がやわらぐ
- 自信が持てる気がする
- 気分が上がる
- 大切にされているように感じる
こうした“擬似的な満足感”を得ることで、心のすき間を埋めようとしていたと思います。
ただしこれは持続性はありません。
満足が消えると、また満たされなさが襲い、再び買い物へと向かう。
この繰り返しが、ローンを重ねた根本原因だったのかもしれません。
③ 高級エステという「特別扱いの空間」が心地よかった
高級エステは、
- 丁寧な接客
- 優しい言葉
- お姫様扱い
- 特別な空間・香り・サービス
こうした“非日常”が演出されています。
彼女にとってこれらは、
日常では満たされなかった『大切にされたい気持ち』 を埋める時間だったのでしょう。
独身で一人暮らし、仕事中心の生活という背景もあり、
自分を丁寧に扱ってくれる場所は貴重な癒しだったはずです。
だからこそ、
また来たい
特別扱いを感じたい
その気持ちを失いたくない
こうした思いが強くなり、金額より“満たされる感情”を優先するようになったのだと思います。

私が勤めていたサロンは、ロッカールームで他のお客様とのバッティングがないよう施術ルームへご案内し、各部屋にはUSENがあり、音楽が選べるようになっていたので、特別感をより感じたのだと思います。
④ 「断る」よりも「買う」ほうが心が楽だった可能性
優しい人ほど、
- 期待されると応えたくなる
- 担当者をがっかりさせたくない
- 感謝の気持ちを形で返したい
という心理が働きます。
彼女は、私やネイリストさんにかなりプライベートな話もしていたので、心を許していたところもあり、
断ったときの罪悪感よりも、買ったときの“喜ばれる感覚”が勝った
可能性が考えられます。
心理的に、自分の心を守る選択をした結果が「購入」だったのかもしれません。
⑤ “心の不足”に気づけないままローンを重ねてしまった
ここが最も重要なポイントです。
彼女は、
買い物が「心を満たす手段」になっていることに気づけなかったのでしょう。
ローンをしてまで買う人は、欲深いのではありません。
心のどこかに「埋めたい感情」が存在し、それを買い物で補っていた結果として財布が追いつかなくなる
という状態です。
- 認められたい
- 丁寧に扱われたい
- 必要とされたい
- 孤独を癒したい
こうした感情が、本人の気づかないところで積み重なり、消費行動につながったのだと思います。
まとめ:彼女は“心の不足”を埋めようとしていた
彼女は弱かったのではなく、心の満たされなさを、買い物やサービスで埋める手段としていたのだと思います。
しかし残念ながら、物やサービスの購入は心の空白を根本的に埋めることはできません。
さらに、カード払いや分割払いを多用していたことで、「お金があるような錯覚」 が生まれ、支出の実感が薄れる状態になっていました。
心理学的には、現金で支払うときよりも、目で減っている感覚がない支払いは、衝動的にお金を使いやすくなることが知られています。
つまり、カードの上限まで使える=心理的安全感が生まれ、購入のハードルが下がるのです。
そのため、彼女の行動は
- 心が満たされない
- 褒められると承認欲求が満たされる
- 「実際にお金が減っている」という感覚がない
という3つの要因が重なった結果、とても自然にローンや分割で高額コースを買い続ける流れになってしまった、と考えられます。
学び・ポイント
- 優しい人ほど「断れない心理」が働きやすく、自分の心と財布を守る意識が必要
- 心の満たされなさを物やサービスで埋めることは一時的でしかない
- 支払い方法によって消費の心理は大きく変わる(現金・デビット・カード)
- 自分の消費行動を可視化することで、無意識の浪費を防げる
