「資格を持っていないとダメな人間」——。
中学の担任に言われた一言が、15年以上私の心を縛っていました。
いくつもの資格を取得しても何か納得いかない、そして現場で気づいた“本当に大切なこと”について、当時の経験と今の思いを綴ります。
中学3年、担任の一言がすべての始まりだった
私が「資格」に囚われていた時期があります。
そのきっかけは、中学3年生のとき、担任の先生から言われたたった一言でした。
中学3年間、些細なことがきっかけで、“被害者なのに加害者にさせられる”という理不尽な立場に置かれ、クラスメイトや担任からのいじめが続いていました。(一見するとイジメ受けているようには見えない、外からはわかりにくいイジメでした)
担任のその発言も、そうした背景の中で放たれた言葉です。
ただでさえ受験を控え、不安定な時期だった私は、その一言で心の糸が切れたように感じました。
高校受験まで残り1か月。受験校も決まっていたある日の放課後、部活仲間のAちゃんと話していたときのことです。担任の先生が近づいてきて、何気ない会話の流れの中でこう言いました。
「Aさんは受かるけど、ナルナル3は、資格何も持っていなくて受かると思っているの?」
その瞬間、どうしてそんなことを私だけに言うのかと思いました。Aちゃんも私が知る限りでは英検、そろばんなどの資格は持っていませんでした。
親も塾に通っている仲間も皆、資格取得よりテストの点数を気にしているのに…
一緒にいたAちゃんとは同じ高校を受験する予定でしたが、その子は私より点数が低かったんです。なぜそれを知っていたかというと、同じ塾に通っていて、そこでは点数順にクラス分けされていたからです。彼女は私より一つ下のクラスでした。
だからこそ、なぜ私だけがそんな言葉を言われたのか、理解できませんでした。
家に帰る途中、涙が止まりませんでした。
どんなに学校生活でつらいことがあっても泣かなかった私が、その日だけは涙をこらえることができなかったのです。

どんなに陰湿なイジメを受けても泣いて帰ることがなかった私が泣いて帰ってきたので、親もさすがに、学校へ連絡して資格がないと本当に今は受からないのか確認していました。電話に出たのがたまたま学年主任だったようで、学年主任に注意受けたのか、その日の夜に担任が謝罪に来ていました。
「資格がないとダメな人間」だと思い込むようになった
それ以来、私の中には「資格がないと価値がない」「資格がなければ認めてもらえない」という思い込みが根付いてしまいました。
努力して結果を出しても、「資格がない私ではダメだ」と自分を責める癖がついていたのです。
高校時代は特に資格を取る機会もありませんでしたが、私の住んでいた地域では卒業間近に自動車免許を取りに行くのが当たり前でした。
それが、私にとって初めての「資格」でした。
そのときの気持ちは、単なる免許取得ではなく、「やっと何かを持てた」「これで少しは胸を張れる」といった嬉しさのほうが強かったのを覚えています。
次々と資格を取得していく日々
高校を卒業してから、私は「資格」を取ることに力を入れるようになりました。
とにかく何かを持っていないと不安で、履歴書に書けるものを増やすことが目的のような時期もありました。
取得した資格は次の通りです。
- 栄養士
- 食生活アドバイザー3級
- 日本エステティック業協会認定フェイシャルエステティシャン(AEA)
- アロマ検定1級
- 日本エステティック協会認定エステティシャン
- AEA認定上級エステティシャン
- タイ古式マッサージレベル1
これらの資格は、リラクゼーションサロンに勤める前にすでに取得していました。
学ぶこと自体は好きでしたし、知識を得ることで少しずつ自信も持てるようになっていました。
でも、その根底には常に「資格を持っていなければダメだ」というコンプレックスの塊でした。
現場で感じた「資格より大切なこと」
リラクゼーションサロンで働くようになってから、私はある疑問を抱くようになりました。
「これ以上、民間資格って必要なのだろうか?」
確かに、人様の体を触る仕事をする以上、基礎的な知識や法律面の理解はとても大事です。
だから資格取得そのものが悪いわけではありません。
ですが、現場で施術していると、資格取得のための勉強では学べない“実際の現場で出る問題・疑問の解決”のほうが大切だと感じるようになっていったのです。
お客様が来店する理由はさまざまです。
「肩がこる」「腰が張る」「足がむくむ」…。
でも、その症状を「どうすれば限られた時間内で、楽になっていただくか」は、資格のテキストには載っていません。
また、自分自身の体に負担をかけずに施術する方法も、実践を重ねて初めて分かるものでした。
こうした経験を通じて、「資格はあくまで入口であって、すべてではない」と気づき始めました。
実践的な学びへシフト
それからは、資格よりも“現場で役立つ技術”を求めて、ワンデーレッスンに通ってみたり、通信講座で習ったり、DVDや書籍を購入するようになりました。
たとえば、
- 小顔のワンデーレッスン
- 腰へのアプローチレッスン
- リンパマッサージのワンデーレッスン
- ロミロミの通信講座
など、ピンポイントで学べる講座などです。
1日だけでも得るものが多く、すぐに仕事に活かすようにしました。
私が特に悩んでいたのは、「体の大きなお客様への施術」でした。
一人の施術が終わるだけでどっと疲れてしまう。
これは技術不足ではなく、「力の使い方」と「体の使い方」が分かっていなかったのです。
その改善を目指して、私はタイ古式マッサージを学びに行くことにしました。
タイ古式マッサージとの出会いと学び
タイ古式マッサージは、「世界で一番気持ちいいマッサージ」とも言われます。
実際に学び始めると、仰向け・うつ伏せ・側臥位など、ポジションも多く、非常に奥深い技術でした。
私が習ったスクールでは、講習代もそれなりにかかりました。
けれど、学ぶたびに「これだ」と感じることが増えていきました。なぜなら、タイ古式では施術者が自分の体重をうまく使い、力任せではなく“自分の体を守りながら施術できる”ように設計されているからです。
しかし、レッスンを続けていくうちに、自分の筋力と体幹がなさ過ぎて無理だと思い、タイ古式マッサージのレベル1で挫折しました(笑)
技術は、使わないと忘れるし、上手くならないので、習った技は実際の施術に取り入れるようにしました。習った手技を使うだけでも、体の大きなお客様にも負担なく施術できるようになり、仕事が格段に楽になりました。
その経験から、今の自分には「資格より、技術が大事じゃないか」と思うようになりました。

タイ古式マッサージレベル1のタイ政府認定の賞状みたいなものは頂きました。国際郵便でタイから送られてきました。
タイ人オーナーのサロンで働いて学んだこと
タイ古式マッサージのレッスン終了後、90分ぐらいの施術ができるようになりたいと思い、習いに行くより直接働いた方が良いと思い、未経験OKで無料研修があるタイ人オーナーが経営するサロンで働きました。
タイ人のオーナーは、タイで資格を取った方でした。
タイで購入しただろうと思われる施術のポスターが壁にインテリアの一つとして飾ってあり、それを見ながら教えてもらい練習しました。できる技、上手くできない技があり、私に合わせて教えてくれました。
できない手技を上手くできるまでやると言うより、まずは、すぐ習得できた技で組み合わせで行い、少しずつ技を増やしていこうという感じでした。体で覚えていくスタイルです。

タイ人オーナー含む働くタイ人の方達は、日本語を話してくれるのですが、日常会話は問題ないけど、イマイチ分からないこともあったため、日本語で書かれているものが欲しいと思って、タイ古式マッサージの本を購入しました。
そして今、思うこと ― “資格”は目的ではなく手段
あの中学時代の担任の言葉から、長い年月をかけて私は学びました。
「資格がないと価値のない人間」なんてことはないということを。
いじめをきっかけに、「資格がなければ自分には何の力もない、認められない」と思い込んでいました。
だからこそ、資格を取ること自体が目的になっていたのかもしれません。
資格だけで人間の能力や価値をはかることはできないです。
けれど、資格は“自分の仕事や生き方をより良くするための道具”だと思います。
そう気づいたとき、ようやく心がふっと軽くなりました。
資格は勉強したという証明かもしれませんが、資格より、経験値を上げ自分の引き出しの数が多いと色々対応ができることを実感しています。
また、リラクゼーションやエステ、整体、按摩など同じような仕事は、資格を取ったら終了ではないです。仕事を続けている限り勉強はし続ける必要があるといつも思っています。

